新設:2004-12-01
更新:2024-03-20
渡し場
原作 : ルートヴィヒ・ウーラント (1787-1862)
共訳 : 猪間驥一(1896-1969)
小出 健(1928-2021)
年(とし)流れけり この川を
ひとたび越えし その日より
入り日に映(は)ゆる 岸の城
堰(せき)に乱るる 水の声
同じ小舟(おぶね)の 旅人は
二人の友と われなりき
一人はおもわ 父に似て
若きは希望(のぞみ)に 燃えたりき
一人は静けく 世にありて
静けきさまに 世をさりつ
若きは嵐の なかに生き
嵐のなかに 身を果てぬ
倖(さち)多かりし そのかみを
しのべば死の手に うばわれし
いとしき友の 亡きあとの
さびしさ胸に せまるかな
さあれ友垣(ともがき) 結(ゆ)うすべは
霊(たま)と霊との 語(かた)らいぞ
かの日の霊の 語らいに
結(むす)びしきづな 解(と)けめやも
受けよ舟人(ふなびと) 舟代(ふなしろ)を
受けよ三人(みたり)の 舟代を
二人の霊(たま)と うち連(つ)れて
ふたたび越えぬ この川を